家は完成して半分
あとの半分は
住む人が育てる。
若い頃、耳にして印象に残っている言葉です。
年齢を重ねるごとに、それは実感をともなうようになりました。
今の家を建てたのが2009年のことでした。
「できるだけ自然素材を使って、家が古くなって来たときに味の出るような家にして欲しい。」
そんなお願いを建築士さんに共有していただきました。
楢材の玄関、無垢材の床、珪藻土の壁。
風の強い地域なので家の形も、いろいろ工夫していただきました。
建築士さんや職人さんたちのおかげでとても気持ちのいい家が出来上がりました。
自然素材を多く取り入れるのは良いのですが、手入れが大変です。
こまめに手を入れないとその風合いを保つのは難しいのです。
玄関の扉は楢(なら)材。
ウィスキーの樽によく使用されている素材です。
その重厚で美しい木肌に惹かれました。
しかし、雨がかかると苔やカビが発生しやすく、乾くと反りやすくなります。
床は無垢材。
木材ですから水気には強くありません。水滴などはすぐに拭かないとシミができてしまいます。
洗面所やキッチンには特に注意が必要です。
手間はかかりますが、どの季節でもサラサラと気持ちよく、見た目もナチュラルな色がホッとさせてくれます。
壁は珪藻土。
湿気をコントロールしてくれるので年間を通じて快適に過ごせます。
反面、物が当たると崩れやすいという弱点もあります。
素材それぞれに個性があり、それをよく理解して付き合う。
「手入れ」をするというよりも「向き合う」ということでしょうか。
いずれも自分が選んだ素材です。
「丁寧に住みなさい」ということでしょう。
先日、収納扉の修理をお願いした際、玄関扉などを作っていただいた職人さんに来て頂きました。
職人さんにとっても久しぶりのこの家。
「相変わらず、いい感じのままですね。」
職人さんの言葉と笑顔に嬉しくなりました。
大切に使っているということが伝わったのだと思います。
一流の職人が使う道具は美しい
と言います。
一流の人は道具をとても大切にする、という意味です。
メジャーリーガーとして活躍するイチローさんもグラブやバット、シューズなどの道具をとても大切に扱うと聞いたことがあります。
職人さんにとっての道具は、私にとって家です。
主婦にとっての道具は家なのです。
ですから、こまめに手入れをしようと思いますが身につくのに時間がかかります。
感謝の心をもってキレイに保ってあげましょう。
「古びても味わいのある住まい」に。
共に年月を重ねていく家です。
味のある住まいになりますよう暮らしを織り込みたいと思う日々です。