緑とペンキと思い出と

タイトル

2020年5月末。
世界中がコロナウィルスの大きな影響を受けました。社会そのものがその構造を変えるかもしれない、変えなければいけない変革の時を迎えているのかもしれません。

ウィルスを恐れ小さく縮こまっていた間も、自然はいつもと変わらない豊かな表情を見せてくれています。
そして疲れてしまった私たちの心を癒やしてくれます。

新緑とそよ風が心地良い季節。
春でもなく夏でもない、緑という季節。

庭のカエデもついこの間、萌黄色に芽吹いたかと思えばみるみるうちに枝葉を広げ、今では若草色の葉っぱが揺れるたびに優しい風を感じます。

梅雨前のこの季節は何をしても気持ちがいいのでお家の外まわりのメンテナンスをすることが多いです。

今日はカエデの下に設置しているアイアンのベンチを始めとして、我が家にあるアイアンのペンキ塗りをすることにしましょう。

アイアンは緑や石との相性がいいので色んな場所で使っています。
以前の家で使っていたチェアやガラス入りのフェンスなどはこの家でもいろいろな場所で活躍しているんです。

門柱の扉や庭のフェンス、バルコニーの飾りなど和洋問わずどこに置いても馴染むのがアイアンのいいところ。

外で活躍しているものが多いので、アイアンの風合いを長く楽しむためには当然お手入れが必要になってきます。
どれも職人さんが手間ひまかけて制作してくれたものばかり。2〜3年に1度、自分で色を塗ることにしています。
塗りを重ねたアイアンは、ぽってりとした厚みが出て温かな質感になってきます。

私がペンキ塗りを始めとするDIYをするようになったのはある方との出会いがきっかけでした。

20数年前のことですが、知人から「会わせたい人がいる」と誘われ、ある女性のお宅へ伺いました。

挨拶を済ませ、玄関を開け中に入った私はびっくりしました。

そこには外国の古いお家のような素敵な空間が広がっていたのです。

もともとあったという壁は全て取り除かれ柱だけ残された広い空間。大きな窓は綺麗にペイントされた木材で縁取られアンティークのレースによって柔らかな日差しが差し込むとってもオシャレな空間だったのです

いまでは広い空間を自由に仕切ることのできるお家は多くなりましたが、当時は部屋で空間を区切るのが主流。

とっても新鮮に感じました。

しかも、その方は一人で壁を取り払い、ペイントし、その素敵な空間を創り上げたと聞き2度驚き、そして感動。

いろいろ話すうちに好きなものや暮らしに対する考え方が似ていることに気づき、その後お家を何度も訪ねるようになりました。

訪問するたびにさまざまなことをその方は教えて下さいました。
木材の切り方、ネジ釘とドライバーの使い方、ペイントのコツなどいまでもハッキリとその時のことを思い浮かべることができます。

それからは自分で木材を選び、カットしてペイント。棚を作ったりたくさん家のパーツを作るようになったのです。

作ることの楽しさ難しさ、お手入れの大切さを学び、回を重ねるごとに体験する新しい発見と反省。それはそれは楽しい時間でした。

その方と出会ってからというもの、家に来てくださる職人さんの仕事を観察するようになったのです。
無愛想で無骨に見える職人さんも多いですが、質問をすると皆さん丁寧に教えてくれました。
道具の使い方、手入れ方法、塗料の種類などメモを残してくれる親切なかたも。

おかげで劣化してきたときに自分で補修し維持できるようになりました。それは丁寧な仕事をしてくれた職人さんの労に報いることでもあると思っています。

人との出会いは不思議なものです。
私にDIYのきっかけを与えてくれたあの方。引き合わせてくれた知人。多くの知識を共有してくれた職人さん。
さまざまな出会いが私に変化や成長をもたらしてくれました。

もちろんいいことばかりではありません。
傷つけられたり悲しい出来事も出会いによってもたらされます。

しかし、すべての出来事を受け入れることで新しい自分を見いだし、その積み重ねによって今の自分があるのだと確信しています。

それらの始まりはすべて出会いがきっかけです。
人だけではなく物も同じだと私は思っています。

そして、そのことをいつまでも感じとれる人間でありたいと願っています。