雪の下から雑草が春を待っているかのように顔をのぞかせています。
24節気では季節は「雨水」。
雪が雨に変わる頃、という意味があります。
寒い中にも春の足音が遠くに聞こえ始める季節ですね。
寒い日の外出にはアルパカで織ったリバーシブルの手織りのコートよく着ていますが、そろそろ薄手のコートを準備しておきたいところです。
手織りの服を初めて着たとき、軽くて柔らかく身を包んでくれるような優しさに感激したのを覚えています。
「自分でも織りの服を作ってみたい」そう思い立って服作りにチャレンジするようになりました。
季節ごとに素材で変化をつけられるのも楽しさの一つでした。
ところが着心地の良い服を織れるようになるのには数年かかりました。
型紙で作る服とは違い、断裁する部分を少なく考えます。
洋裁を習ったことのない私には難しく、失敗の連続でした。
気に入った作品ができるまで、縫ったものをほどき、縫い直してまたほどき。
そんな試行錯誤を繰り返しながら感覚を身につけていきました。
織りの段階では何を作るかは決めずに織るのが私流。
出来上がった織布の長さや幅はもちろんですが、横糸で遊びを入れた部分を服のどの部分に活かそうか。そんなことを考えながらデザインしていきます。
思いのほか面白い作品ができて喜んだり、イメージしたものとは違うものになってがっかりしたりと試行錯誤を繰り返していますが、絶えず工夫しながらの作業はとても楽しく幸せな気分になります
自分が納得のいくまで工夫する。
その過程が楽しい。
失敗も含めて楽しめる気持ちが大切だと常々思っています。
いつのまにか外出するときは織りの服を着て出かけるのが当たり前になりました。
街で「そのお召し物はご自身で作られるのですか?」と声をかけていただくことがよくあります。興味を持っていただけることが嬉しくて、一連の工程を説明すると「ぜんぶ一人でやってるんですね」と多くの方は驚かれます。
染め・織りから洋服の仕上げまでを自分ひとりでしているのは珍しいのかもしれませんね。
自分の好きなように思うままに形に仕上げていくのは大変な作業です。自分の頭のなかにあるイメージを表現するときに壁にぶつかることもあります。
迷ったり悩んだり、手が止まってしまうこともあります。しかしそれらを含めて織りの世界。工夫をこらせば迷いや悩みはいずれ作品のスパイスとなってより良いアイデアを運んできてくれます。そして、織りの楽しさを演出してくれることでしょう。
何事も、「困ったときは工夫をするチャンス」だと思っています。
それは「織り」が育んでくれた私のライフスタイルでもあります。
1本の糸から始まる織りの世界は、私の生活を彩りのあるものにしてくれています。
織りとの出会いにこころから感謝ですね。
さあ、3月。
早く、春らしい織りの服が着たいものです。
この春はどんなお洋服を作りましょうか?
そんなことを考えていると、こころがすっかり春めいてきました。
もしかしたら春は人のこころが連れてくるのかもしれませんね。