『母の日』によせて

今年もまた緑色の季節がやってきました。
湖からの風は心地よく
青い空には真っ白な雲が一つ。

ふんわりとまぁるい雲を見ていると
それがだんだん毛糸玉のように見えてきます。


私は子供の頃から母の手編みのセーターを着て育ちました。
とても暖かくて、それを着るのが冬の楽しみの一つ。

身長が伸びて丈が短くなると、母はそれをほどき染め直します。
いろんな毛糸を集めて編みなおし、少し大きくなったセーターを着せてくれました。

手編み独特のふんわりとした暖かさ。
母が自分のために作ってくれたという喜び。
私の心は優しさに包まれていました。

母の手仕事をそばで見ていた私が手編みをするようになったのはとても自然なこと。
結婚し家族ができて、セーターやベストを家族に作るようになりました。

その後、私は織物と出会うことになるのですが、きっかけは母が作ってくれたのだと思っています。
母が楽しそうに編み物をする姿は、私に手仕事の大切さや喜びを教えてくれました。

そう、私が初めて出会った先生は『母』だったのです。


私が大切にしているものの一つに、このウールの座布団があります。

母の手作りウールの座布団

これは私が小学生の頃に描いた絵をもとに母が作ってくれたものです。
もう着なくなったセーターやカーディガンをほどき、短く切り、結んで
この座布団を作ってくれました。

この全く無駄のない創作は、今も私に影響を与えています。


それから、ずいぶんと時は流れました。

年老いた母に会いに行く時、自分で作った織りの洋服を着て行ったことがありました。
母は「よくできたね。」とほめてくれました。

笑顔の母の瞳は優しく、とても嬉しそうな表情を浮かべていました。

今でも目に浮かぶ素敵な笑顔。

『母の日』は感謝の日。
大切なことを教えてくれた母にありがとう。
心から感謝しています。

青い空にはふんわりまぁるい雲。
毛糸玉のような雲が一つ。
さっきより小さくなった気がします。

母の事ですから
天国でも編み物を楽しんでいるのでしょうね。