思い出の黄色い花。オキザリスとの不思議なご縁

四種類のオキザリスたち

我が家の庭には四種類のオキザリスが顔を出します。
エンジ色の葉にピンクの花。
緑の葉に濃いピンクの花。
葉裏がエンジ色の赤い花。
そして、黄色い花を咲かせるもの。

今日は、この「黄色いオキザリス」と私の、ちょっとした思い出をお話ししたいと思います。

これらは私がお店で買ったものではありません。季節になると自然に葉が出て、気がつけば花が咲いてくれるのです。

庭を歩くたびに、違う色がぽつり、ぽつりと咲いています。どれも表情が違い、同じオキザリスでも、葉や花の姿がまるで兄弟のように個性を持っています。

中でもひときわ心に残っているのが、「黄色いオキザリス」です。

私とオキザリスの出会い

黄色い花との出会いは、以前住んでいた家の近くでした。家から三十分ほど歩いたところに美術館があり、その周りの道が私のお気に入りの散歩コースでした。

門をくぐると小さなお庭があり、静かに水が流れる小川があり、東屋で休むこともできました。植物を見ながらお茶を飲んだり、ゆっくり風に吹かれたり……そんな時間が、私にとって楽しみのひとときでした。

あの日、おばあさんにもらった花

その美術館へ向かう途中、高台にあるお宅の前の斜面が、それは見事な花でいっぱいでした。手入れをされているおばあさんと顔を合わせるうち、自然とお話をするようになりました。

ある日の散歩帰りに、そのおばあさんに会ったときのことです。私が草花をいくつか摘んで持っていると、おばあさんはやさしく笑って、こう言われました。

「その草はおいていきなさい。これをあげるから植えてみて」

そうして手渡されたのが、黄色いオキザリスでした。

冬になると、私の家の庭は緑と黄色の花壇になりました。毎朝の庭が明るく感じられたのを覚えています。

その後、おばあさんは亡くなられ、お庭を通ると、おじいさんが静かに手入れをしておられました。胸がすこしきゅっとする、切ない思い出です。

引っ越しと気づき

ちょうどその頃、我が家も引っ越すことになりました。鉢植えと土を運び、いただいたオキザリスも、新しい家の庭へ連れていきました。

今の家は、道路より高いところに建っています。斜面の部分を、何年もかけて少しずつ庭に整えていきました。

そしてある日、不意に気づきました。

「ああ、私、あのおばあさんと同じことをしている」

偶然ですが、どこか不思議なご縁を感じて、なんだか胸があたたかくなりました。

斜面の庭で再び咲く花

さびしい冬のあとに、そっと顔を出す黄色。

冬の庭はさびしいものですが、春先になると葉のあいだからすっと首を出し、黄色い花を咲かせます。

みどりと黄色はとてもよく目立つのでしょう。通りがかった方から「何の花ですか?」と、声をかけられることがあります。

毎年咲くたびに思い出します。あのおばあさんの、あの見事な斜面の花を。そして、あの日いただいた言葉と花は、ずっとここにあります。

思い出の黄色。これからも大切にしていきたいと思います。